2019年6月7日金曜日

Agatha Christie " A Pocket Full of Rye"



 ミス・マープルシリーズの長編第五弾。
 読んだのはこのバージョン。


日本語訳はこれ。


 あらすじも日本語版から引用してみよう。

投資信託会社社長の毒殺事件を皮切りにフォテスキュー家で起こった三つの殺人事件。その中に、ミス・マープルが仕込んだ若いメイドが、洗濯バサミで鼻を挟まれた絞殺死体で発見された事件があった。義憤に駆られたマープルが、犯人に鉄槌を下す! マザー・グースに材を取った中期の傑作。
上記のボックス・セットで最初から読んでいって、たまたま順番がこれだったというのもあるが、『アガサ・クリスティ完全攻略』(感想)でマープル長編最高昨評価(正確にはトップタイ)が出ていたので読んでみるかと。ドラマ版の記憶もほとんど消えていて、犯人が誰かということくらいしか覚えていなかった。
 で『完全攻略』で
 まず何より、
 ミス・マープルがカッコいい。
 ということを強調しておきたい。彼女の登場シーンに私は鳥肌を立てた。カッコいいのだ。
と紹介されていたので、ミス・マープルが登場するのを楽しみに読み進めたのだけども、なかなか出てこなかった。なんと13章までお預けであった。そこまでには上記の事件が起きたり、家族内の勢力図やら人間関係やら会社のそれやらをニールって刑事が一生懸命追いかける。で、黒ツグミのマザーグースって鍵を遠路はるばるやってきたミス・マープルが持ち込み、ここで探偵交代かと思いきや、さらにニールの捜査がメイン。考えてみれば『火曜クラブ』(amazon)とかでは安楽椅子探偵だったよマープル。で、なぜかニール刑事の文字列を見るたびに、『ストリート・キッズ』(amazon)ニール・ケアリーを思い浮かべてしまって、ウィンズロウを読み返したくなった(なんでだろう。そして、今amazon確認したら表紙が昔と違っててショックだった)。
  あらすじ紹介にも『完全攻略』にも言及はなかった気がするが、『ライ麦……』でいちばん気に入ったキャラクターは最初の被害者の前妻の姉だか妹だかであるミス・ラムズボトム。この人と遠地から戻ってきた被害者の次男ランスとが会話する12章の1が個人的にはお気に入りの場面になった。不吉な雰囲気をうまく醸し出してると思う。こういうのあると中だるみを避けられるよね。まあ、どのみち次の章でミス・マープル出てきて、見立て殺人のモチーフが導入されてギアが変わるんだけどさ。
 あとは25章の最後の一文なんかもクリスティーっぽいというか、『魔術の殺人』のある場面を思い出したので、マープルものっぽいというか、上手に次の章を読ませるよなあ。こんなん言われたらやめるわけにはいかないとページをめくった(ドラマ版を見ていて、犯人だけ覚えていたというのに)。
 正直に言うと、10章までの展開はいささかかったるいし出てくる人も多いので人によっては苦痛かもしれないが、そこを過ぎれば安定した面白さが始まる。でもって後半の安定した面白さを支えるのが冒頭10章分で提示されたデータだったりするので、あくびしながらでもとにかく11章へたどり着くのが大切。最後には評判のいいラストシーンが待っている。未読の人は読んで損なしですよ~。

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