2019年11月1日金曜日

有栖川有栖の国名シリーズ



 ここでも書いたようにあまり楽しく読める印象のない有栖川有栖なんだけども、斎藤工が火村英生を演じるドラマ版は大好きで、先日「ABCキラー」を原作にしたスペシャルドラマを見て「かっけーーーー」ってなったのを機に国名シリーズのまとめ買いに走った。たぶんドラマとタイミングを合わせたんだと思うけどだいぶ安かったし。掲げている書影が合本版なのはリンクを何個も貼るのが面倒だっただけで、実際には『ロシア紅茶の謎』から『モロッコ水晶の謎』までを読んだ。スウェーデン館の謎とマレー鉄道の謎が長編で残りは短編集。著者の語りと自分との相性はそれほどよくない(いつも冗長に感じる)ため、さっさと事件が起きる短編集の方が読みやすい印象だったが、めちゃくちゃ挫折しそうになった『マレー鉄道の謎』が読了時点での満足度がいちばん高かった。いかに謎解き場面まで辿り着くかがタスクだった印象。『スウェーデン館』も謎解きまで行けば驚きあって面白かった。短編なら「ルーンの導き」「八角形の罠」(以上ロシア紅茶)、「ブラジル蝶の謎」(短編集の表題作)、「ジャバウォッキー」(『英国庭園の謎』)、「スイス時計の謎」(短編集の表題作)、「モロッコ水晶の謎」(短編集の表題作)などは読了時の印象がよかった。「ジャバウォッキー」はミステリーのコアってこういうことだなあという印象を受けた(典型的な推理小説だと言っているわけではない)。典型的な推理小説としては「スイス時計の謎」を推す。すごくロジカルで楽しい。「モロッコ水晶の謎」は梓崎優のある作品を連想した。
 こんなに読めたのもアリスと火村のセリフを全てドラマ版の声でイメージしたおかげである。テレビドラマ偉大。おかげで有栖川有栖川の楽しいところがどの辺なのかがわかった。っつーことで、原作本はいっぱいあるし、さっさと新しいシーズンを始めてもらいたい。見るから。

火村英生〈国名シリーズ〉9冊合本版 (講談社文庫)


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